戸車とVレールで引き戸を作ろう(前編) | フラッシュ構造の全面引き戸DIY

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前回の記事で床の間と押し入れのリノベーションが完了したわけだけど…

丸見えの壁一面収納

丸見えじゃないですか、やだー!

そこで今回は収納の手前に4枚引き戸を作ってみようと思う。上手くいくかかなり不安だったけど、まぁまぁいい感じになったので記事にしてみた。

4枚引き違い戸で完全に隠れるようになった

いきなりだけど完成形はこんな感じ。全面引き戸だから、収納へのアクセスは全く問題ない。
制作に時間かかるし、気合いと根性は必要だけど、しっかり設計すればきっと大丈夫!

アホみたいに長い記事になったけど、しっかり説明していくので最後まで読んでいただけると嬉しい。

材料

古い家の引き戸だと襖(ふすま)が一般的だけど、洋間には絶対合わないのでVレールを使って作る。動きが段違いにスムーズだし、レールの敷設もかんたん。しかも低コストなので、新たに引き戸を作るならこの方法がベストだと思う。

V型レール

Ⅴレールは基本長さ1,820㎜。サイズは安定する12㎜角がおススメ。
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その名の通りV溝のついたレールで、これを床に埋め込んでV溝に戸車を走らせる形になる。12㎜角がおススメだけど、この時は初めてでよく分からずに安価な9㎜を使用した。
ちなみに形状にはY型やT型といった類似品もあるので紹介しておこう。

戸車には車輪の形状でⅤ型・Ý型・T型の3種類がある
溝の形状メリットデメリット
V型床面とツライチで加工可能・入手しやすい・低コスト深く溝を掘る必要があり、精度が悪いと隙間が目立つ
Y型・T型脱輪しづらい・溝掘りが失敗しても隙間が見えない入手しづらい・レールと床に段差ができる
敷居レールパーツが不要溝掘りに精度が必要・滑りが悪い・重い引き戸が使いにくい

ざっとこんな感じ。襖で使用される敷居も一応比較に入れておいたが、個人的にはV型一択である。
V型はツライチで加工できるメリットが大きいし、脱輪についてもドア自重で抑えが効くので気にしなくていいと思う。

V型レールを使う予定で脱輪が気になる人は必ず12㎜を選ぼう

まぁY(T)型を選んでもいいんだけど、とにかく入手性が悪い。Amazonですらまともな価格の物が見つからないし、ホームセンターでもV型しか置いてないとこが多い。

溝掘りが上手く出来るか心配なだけって人は、Y型を探すより↑みたいな耳付きのV型レールを選べばいいんじゃないかな?

敷居は…選ぶ理由が見当たらない(;´・ω・)

長さは設置位置より長めの物を選んでおけば金切りノコで簡単に切断できるので心配いらない。

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逆に長さが足りない分は続けて継ぎ足せばいいだけで、レール相互の接合は不要。

調整戸車

レールと戸車の形状が一致する物を購入しよう。

戸車はレール上を走らせる車輪と取付枠がセットになったものだと思ってもらえばOK。とりあえずレールと車輪の型だけは間違えないように要注意。

引き戸1枚あたり2個は必要になるので、「ドアの枚数×2個」用意するようにしよう。
あと初心者なら調整戸車を猛烈におススメする。

↑V型レール使うなら、こういうスペックの物を選んでおけば間違いない。

なぜ調整戸車がいいのか?

字のごとく高さが調整できる戸車なので、ドアが歪んでても調整でほぼ確実に平行が出せる。

調整戸車は高さ方向の調整が出来る

調整方法はこんな感じになる。調整なし戸車と比べると多少コストは上がるが、ここはケチるべきじゃない。普通の調整ナシ戸車を使った場合…

ドアが歪んでいると上方と下方で隙間の大きさに差が出来る

こうなったら詰む。修正できなくはできないだろうけど、修正と確認で毎回戸車の着脱が必要になる。まぁビス穴ガバガバになるだろうし、物凄い時間かかるのは確実。

ところがどっこい、調整戸車だといとも簡単に修正できる。

調整戸車なら隙間の調整がドライバー一本で簡単に修正できる

上の状態から5分もかからずに修正した状態だけど、めっちゃ簡単。
一発で平行出すのはとっても難しいので、後悔したくないなら調整戸車を買うべきである。
古事記にもそう書いている。

1×4(フレーム用)

まず、今回のドアはフラッシュ構造で作っていく。

フラッシュ構造:フレームに面材を貼っただけのドア。大部分が中空になる。

こんな感じで作られたドアで、一般的な引き戸やドアはこの構造になっていると思う。低コストで簡単に作れるし、材料の選定も楽なのでDIYにも向いてる。

ちなみに以下の記事で作った開き戸ドアもフラッシュ構造なので、よろしければついでにご覧いただきたい。

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で、フラッシュ構造のドアを作る場合、1×4材をフレームに使うと丁度いい感じの厚みになるし加工の手間が減るのでおススメ。

さらにコスト削減や軽量化したいなら幅方向だけ半分にカットして使うこともできる。

面材

ドア全面に合板やベニヤ板を貼るのが一般的だけど、何を使おうが自由である。今回は中央2枚のドアには野地板を使用してみた…

未乾燥材は節が多く、水分が抜けるにしたがって隙間も拡大する。

が、反りも節も多く乾燥も不十分なものが多いので、正直おススメしない。低コストの無垢材ってのは魅力だけど、目立つ位置の面材に使うもんじゃないね。
同じような貼り方するにしても1×4なんかをスライスした物の方がよっぽど見た目がいいと思う。

外側2枚のドアにはラワン合板を使用。安価だけど見た目が単調で、そのままだとイマイチ。

化粧フィルム(ダイノック)

そこで外側のドアにはダイノックフィルムを使用した。普通に買うとめちゃくちゃ高価なのだが、メルカリで1ロール(25m)丸ごと投げ売りされていた物を購入。

ダイノックフィルムサンプル

ちなみに幅は122cmあるので大物にも継ぎ目なしで貼れる。使い切れるかは知らん!

とりあえず軽くメリットとデメリットだけ紹介しておこう。

メリット

糊が強く角部にも貼り付けしやすい
伸びが良くカーブにもしっかり追従する
カットが容易

デメリット

シートが薄く、下地のわずかな凹凸も拾う
糊が強く貼りなおすと下地側が剥がれる事がある
定価が高い

その他

消耗品として必要なのは木工用ボンドとビスぐらい。ビスは面材やフレームとの絡みで使う長さが変わるけど、工程の方で説明する。

ボンドは普通のコニシ製でOK。使用量が多いので、大型のやつがおススメ。

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工具は丸ノコとサンダーとインパクトがあれば十分形になると思う。

制作のおおまかな流れ

大きく分類するとレール側の加工とドア側の加工に別れる。どっちからやるべきか悩むかもしれないが、以下の順序で作るのがおススメ。

今回の制作順

理由は「レールの位置に合わせてドアを作る」よりも「ドアの形に合わせてレールを配置する」の方が簡単だし楽だから。

下がり壁を作る

なんでわざわざ壁作るの??

と思うかもしれないが、天井に直接上部レールを作ってしまうとデメリットが多い。

  • ドアが縦長で見た目のバランスが悪い
  • コストがはね上がる
  • 加工の手間が増える

つまり

壁よりドアの方がコストがかかるのは想像つくと思うし、規格サイズの材料が使いづらいのでカットや継ぎ足しなどで手間もかかる。何より開口部よりデカいドアになんのメリットもない気がする。

開口じゃない部分は固定壁にした方がベター

というわけで、バラした家具の余った杉材と1×4で下がり壁を作る。高さは開口部に干渉せずなおかつ野地板がそのまま使える2mより若干高めに設定した。

まずは↑みたいな感じでベースを作る。壁に固定する側の木材は下からビス止めするので、ある程度厚みがあったほうが作業しやすい。2×4程度の厚みがあれば十分。

下がり壁の支柱は見えなくなるので適当に固定

壁に固定した木材と同じ長さで切り出したものを適当な間隔(石膏ボード幅に合わせるのがおススメ)で配置してビス止め。天井側との固定は安い金折れなんかで十分。

最後に石膏ボードを貼るけど、レール固定がやりづらくなるので今はここまで。

ドア本体を作る

ここは工程が多いので、より詳しく説明していく。

ドアフレーム

最初に言ったようにここは1×4を使うのがおススメだけど、コスト削減と軽量化のために幅方向を2分割するとなお良いと思う。

1×2買えば加工いらんやんけ!

これは正しいのだが、1×4と2×4以外は価格がべらぼーに高い。

6フィートSPF材の価格例。1×4が268円に対して1×2が448円。

1×2は1×4の半分程度の素材なのに価格が倍近くになるという謎現象が起きてしまう。なんでやねんの極み。

そこで、安価な丸ノコ買って縦挽きする方がずっとおススメ。そこそこDIYやる人なら丸ノコ代ぐらい簡単にペイできる。

今回は残念ながら2×4しかストックが無かったので厚みも幅も2分割して使用する事にした。長手方向のカットは難しいんだけど、丸ノコ定規があればかなり正確にカットできる。

丸ノコ定規の使い方
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長さが15㎝から90㎝まで5種類ほどあるけど、価格差が小さいし使える場面が増えるので個人的には一番長い90㎝がおススメ。ただし長いものほど取り回しが悪くなる点は覚悟しておこう。

↑でも書いたけど、突き当て面の精度がそのままカットラインに出る点だけは十分注意してね。

フレームの組み方

せっせとカットしたフレーム材を組み上げていく。ビスと木工ボンドを併用して接合する。
ビスは横方向フレームの位置に2本ずつ打ち込めば十分。スリムビスの長いやつ(40㎜以上)がいいと思う。上の写真みたいに「皿取り錐」というビットを使うか、フレキ付きのビスを使えばビス頭が綺麗に収まる。

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戸車取り付け

ドアに面材を貼る前に戸車の取り付けをやってしまおう。面材貼った後にフレームを掘るのがマジョリティっぽいんだけどさ

掘り込みって加工難易度高いの

やった事ある人は分かるだろうけど、めんどくさいし綺麗に仕上げるのが難しいのよこれ。「極力やりたくない加工ランキング」があるなら5本の指には入ると思う。そこで僕は考えた

面材を貼る前に戸車部のフレームをカット

こうやって先にカットするとめっちゃ楽ではないかと。ここではマルチツール使ったけど、糸鋸なんかでも余裕。
上の写真みたいにカットラインにガイドとなる端材を当ててやると綺麗に仕上がるよ!

面材をカット部を覆うように貼れば見た目は問題ナシ

しかも、完成後の見た目には全く影響が出ないし、厚み方向の位置調整もめっちゃ簡単。
ぱっと見だと掘り込みにしか見えないよね??
特に欠点も見当たらないので、同じような引き戸作るならこっちの方法をおススメしたい。

あとは戸車をビス2本で止めてやればOK。

面材張り付け

今回は外側の2枚は両面合板で、内側の2枚が裏面合板+表面野地板で作った。作業がちょっと違ってくるのでそれぞれ説明したい。

合板を使う場合

合板の継ぎ目は補強を入れた方がよい

まず今回の場合、合板の長手(1820㎜)を超える高さ2mで設計しているのでどうしても継ぎ目が出てしまう。この境界位置で合板がたわむと平面が出しにくいので写真のように補強を入れてやった方がいい。

写真では戸車位置のフレームにも補強入れてるけど、両側から面材で挟み込むので省略しても強度は問題ないと思う。

固定は何も考えずにフレーム位置に短いビス止めでOK。今回の引き戸位置の場合、裏面は見えないので特に加工はしない。表面だけはウッドパテでビス頭と合板の継ぎ目を埋めた。

補強を入れることで合板継ぎ目の段差がほぼ0になる

補強のお陰でパテなしでもそこそこ平坦に仕上がってるのが分かると思う。

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パテ研ぎ嫌いだけど、これは切削性もいいし希釈もいらない。痩せも少ないので、一発で仕上がったし化粧シートの上からもビス位置や合板継ぎ目は全く見えない。

ただし、バケツは密閉できないし中はただのビニール袋なので、保存には気を使った方がいい。僕はビニール袋をジップロックに入れてバケツで保管してる。

対策せずにバケツに入れて保管してると、次回使う時ただの岩になってそう。

こちらの表面にはダイノックフィルムを張るが、工程は別記事で紹介しようと思う。

無垢材を使う場合

今回は野地板だが、無垢材を使用するなら同じようにやってもらって問題ない。

高さが2mの設計なのでカットは不要だけど、表面ガッサガサなのでしっかりサンディング。

野地板は表面が粗いのでサンダー必須

表面からビス頭が出ると不細工なので、野地板をフレーム裏側からビス止め。先にボンドだけで貼って、最後に裏の合板ごとまとめてビス止めでもOK。

好きなワックスとかオイルで仕上げれば完成。
パッと見はいいんだけど、やっぱり乾燥状態と見た目のいい木材使った方がおススメ。綺麗な1×4材とか選べばコストもそこまで変わらないしね。

薄手の取手はビス止めだけでOK。

取っ手はこの段階でつけてもデメリットしかないので、全体が完成した後に取り付ける方がおススメ。というわけで、ここでは一旦終了。

これで引き戸まで出来上がり。4枚も作ったので大変ではあったが、コスパは抜群にいいので市販品買うよりずっとおススメ。

と言うか、こんなもん買おうとしたらおいくら万円かかるか分かったもんじゃない。

結論:もうちっとだけ続くんじゃ

完結させるつもりだったけど、あまりにも記事が長くなっちゃったんで分割させていただきたい(汗)

作業難易度の高い部分は越えたので、ここまでやり遂げられた人なら完成まで突っ走れるはずだ。

次回はレール作りから始めていくので、ぜひ続けて読んでね!