DIYで家具を作ろうと思う人は少なくないだろうが、ドアなどの建具となると尻込みしてしまうのが普通だと思う。
特に引き戸の場合は、サネや溝の加工などが必要なので作業が難しく手間もかかる。失敗したらまともに動かないドアになる可能性もある。
だが、バーンドアであれば話は別。
バーンドアは『DIY初心者でも簡単に作れる引き戸』と言えると思う。ただし使用する場所には注意が必要だし、施工説明書だけでは分からない点も多い。
そこで今回はバーンドアを採用するメリット&デメリットと、実際にキットを使用して作る手順を徹底的に解説していこう。
開き戸からの交換を行うが、開口にドアを付けたいだけの方にも役立つと思う。
長い記事になるが、本気でバーンドアを作りたいと思っている方はぜひ読んで欲しい。
バーンドアとは?
アメリカの納屋なんかで使われてる引き戸だったことからこう呼ばれるようになったらしい。レールやローラーがむき出しでドアが吊り下げ式などの特徴があるが、通常のドアとの一番の違いは開口より大きいドアを壁の前に被せる形になる点だと思う。
理由は後述するが、この違いだけで設計も取り付けも他のドアよりずっと簡単になるので初心者にもおススメできるわけだ。
バーンドアの材料はドアを除くパーツが全てセットになったキットとして販売されている。僕が見た限りホームセンターなどでは取り扱いがないので、ネットで購入する必要がある。
今回取り付けたのは購入時最安値だった↓のやつ。
サイズの選択肢が多いが、一般的なドアの代用ならこのサイズでOKだろう。ちなみに「J型」や「I型」というのはローラーと扉の固定金具形状の事なので、見た目の好みで選んで問題ない。
バーンドアのメリット
他のドアには無いメリットが多数あるので、細かく紹介していこう。誰もが見た目で分かるようなメリットは省略する。
取り付け場所を選ばない
例えば我が家でバーンドアを取り付けた位置の場合、元々ついていた開き戸のままだと家具の配置に困ることになる。
このような場合は引き戸にしたいわけだが、元々引き戸でない場所に取り付けるとなると、ドア1枚分の空間を新たに作る必要がある。分かりにくいと思うので上面図で解説。
加工が面倒とかそれ以前の問題で、危険が危ない。
もちろん構造上削っても問題ない柱である可能性はあるが、「そもそも判断できねぇよ!」って話である。
この問題をクリアできたところで、レールや溝などの加工が死ぬほど面倒なのは想像できると思う。もちろんおススメできないし、僕もやりたくない。
一方でバーンドアなら壁の手前にドアを付けるので、上記条件さえ揃えば工夫次第でどこにでも取り付けることができる。実際の施工ポイントは後述するのでご安心いただきたい。
ドアの自由度が高い
ドアを自作することを考えた場合、普通の開き戸や引き戸は枠の中に納める形になるので多くの制限がある。これが非常にめんどくさい。
読むのも嫌になるだろうが、リアルにこれだけの事を考えなければいけない。
一方でバーンドアならば開口の手前に被せる形になるので、制限が少なく自由度が高い。極端な話、ボルト留め部分の厚みさえクリアできれば適当な合板をぶら下げるだけでもドアになっちゃう。
シビアな調整が不要
ドア作りで苦労する点の一つに、動きをスムーズにするための加工がある。開き戸なら蝶番やハンドルの取り付け、引き戸なら溝加工やレールと戸車の取り付けなどがある。これらが一つでも上手くできてないと、まともに動かなかないドアになってしまう。
これがバーンドアならば、動きに関わるのが壁に取り付けるレールとローラー部だけなので調整が基本的に必要ない。レールの平行さえ取れていれば大きい失敗は起きない。多分。
動きが軽くて音も静か
古い家に住んでいる方ならば、基本的に引き戸は敷居レールと平型戸車の組み合わせだと思う。そもそも動きが重いし、経年劣化が進むとさらに動きが重くなるし嫌な音も出てくる。
一方でバーンドアは非常に動きが軽い。マジで指一本で開閉できる。動きがスムーズで抵抗が少ないので軽く押すと慣性でしばらく動き続ける。
下の動画を見ていただくとわかりやすいと思う。
初めて操作するとちょっと感動できるぐらいにスムーズ。実家のクソ重たいドアをこいつに交換してあげたらとても喜ばれるだろう。
意外に低コスト
バーンドアは基本的にキットを使用して作ることになるが、価格としては5000円中盤が最安値だと思われる。ドア金具だけで5000円以上と考えると高く見えるかもしれないが、実際にドア本体を除いた価格で考えると意外に差は少ない。
バーンドア | 開き戸 | 引き戸(Vレール) | |
---|---|---|---|
ハンドル | セット | 2,000円(錠無し) | 750円×2 |
レール | セット | – | 700円 |
戸車 | – | – | 600円×2 |
蝶番 | – | 2,500円 | – |
吊りローラー | セット | – | – |
合計 | 5,500円 | 4,500円 | 3,400円 |
ネットやホームセンターで最安値の製品を揃えた場合で大体このような感じになる。ドア材単体なら制限が少なく自由度の高いバーンドアが最も低コストで制作可能である。
バーンドアは加工の手間がかからない点も考えると、コスパは非常に良いと思う。
一から引き戸作るのめちゃくちゃ大変だからね…
DIYで作るのが簡単
バーンドア最大のメリット。僕は実際に通常の引き戸や開き戸も作ったが、工数が圧倒的に少ないし難易度も低い。キットを買えば基本的に必要な物は全て揃うので材料選定の手間もかからない。
初めてドアを作る方や、作業に自信の無い方にも非常におススメしやすいドアである。
バーンドアのデメリット
とてもメリットの多いバーンドアではあるが、当然ながらデメリットも少し存在する。
裏側がイケてない
バーンドアの欠点はほとんど裏側に集中していると思う。上面図で解説すると以下のようになる。
ドア周囲に壁との隙間が見える
バーンドアでは通常のドアではありえないほどの隙間がある。開口より大きいドアを被せる表側では気にならないが、裏側から見ると”壁からちょっと離れた位置にドアが浮いている”のである。上手い事表現できないけど、なんかイケてないのよね。
全閉・全開時にハンドルが隠れる
これは先ほどの上面図で理解してもらえるだろう。ドア自体は軽い力で開閉できるから、ハンドル無くても実用上問題はないとは思う。けどやっぱり違和感があるしイケてない。
語彙力ェ…
僕みたいに気になる人はずっと引っかかる点だと思うので、採用するなら片側からしか操作しないドアに限定した方が安心だろう。
気密性が低い
構造上ドアと壁の隙間がそこそこあるので、光も音も臭いも漏れるものと考えた方がいい。トイレのドアに使うのは重罪である。
特に光の漏れは気になるので、ドア裏側の空間は窓が無く、照明を使用する時間が短い場所が適している。
バーンドアが最適な場所
これらのメリット・デメリットを踏まえて使用するのにおススメの場所を紹介していこう。
開き戸が設置できない場所
開き戸が家具に干渉してしまうために配置を変えている人は少なくないと思う。狭い家だと開き戸が理由で家具が置けないこともあり得る。このような場所はバーンドアを使用するメリットが最も大きいと思う。
パントリーや物置空間
デメリットから考えた場合、理想的な場所は「窓が無く狭い空間で、基本表側からしか操作せず、照明も一時的にしか使用しない場所」となる。これに合致するのがパントリーや物置である。
そして我が家でバーンドアを採用した場所は階段下スペースを使った狭小パントリーである。先に画像で見ていただいたが、開き戸だとダイニングテーブルに干渉する場所なのでバーンドアには最適だと言えるだろう。
ドア枠の撤去
僕のように開き戸から交換する場合は、既存のドア枠を撤去する必要がある。(関係ない人はこちらから読んでね)
作業としては以下のような感じ。
まずは最初の3工程。2番の突き出し除去が結構きついかもしれない。マルチツールがあれば楽なのだが、持ってない場合は普通ののこぎりでもいけると思うが、ある程度の刃渡りと切断能力は必要。
剪定用に買った物だが、思いのほかDIYで使えるのがこいつ。切断面は荒いが、硬い建材もガンガン切れるので精度を必要としない場面におススメ。ケースもあるし折り畳みもできるので保管にも困らない。
受け跡の凹みは9㎜(か12㎜)だったので合板の厚みで過不足なく埋められる。パテだけで埋めるのは大変なので極力やめておこう。
パテだけでピン角を出すのは非常に難しいのだが、コーナーテープを使用すると簡単に綺麗な角が出る。
でも少量売りが無くて高い買い物になるので、なかなかおススメはしにくいんだよね…。複数部屋の壁紙張りをやる人なら買って損はないと思う。
使用するパテはクロス用ならなんでも良いが、僕はホームセンターでタイガーパテの4㎏を買ってる。とにかく安いし、使ってて不満も無い。
今回は周辺の壁紙まで一気に張り替えたが、ドア枠部分だけやっても問題ない。既存の壁紙との境界が気になるかもしれないが、どうせバーンドアで隠れる場所である。剥がれ防止のために後コークだけやっておけば良いだろう。
周囲も併せて張り替えを考えているのなら、バーンドアと相性の良いモルタル仕上げもおススメ。モルタル壁の施工については以下の記事で紹介しているので、興味のある方はご覧いただきたい。
ドア本体制作
元々開き戸も無い開口であれば作業はここから。とは言っても、先述の通り面積と厚みさえクリアすればどんな物でもドアにできる。
一応僕が作った手順を紹介しておく。
「あれ?ドア枠の撤去より簡単じゃね?」と思ったかもしれないが、実際そう。後ほど加工する部分は出てくるが、ベースはこれで完成である。
上記工程では省いてるけど、表から見える面だけはサンディングするべき。
僕と同じ材料で作るならクリップ式のハンドサンダーと#240のペーパーだけで十分だと思う。もちろん電動サンダーがあればさらに効率良く作業できる。電動サンダーに興味のある方は以下の記事もご覧いただきたい。
流石にこれだけじゃあんまりなので、ちょっとだけポイントを紹介する。
材料はなんでもいい
僕は先ほど紹介した材料で作ったが、今回のために準備したわけではなく、家に転がってた木材と廃材を無理やり組み合わせただけである。
今回使用した製品の指定ドア厚さは35㎜~45㎜なので、これでクリア。最終的な厚みを確保できるなら1枚ものでもいいし、12㎜合板を3枚重ねでも問題ない。とにかく自由に作れるのがバーンドアのいいところ。
裏側はどうでもいい
こんな狭いパントリーの中に入ってドアを閉めて裏からドアを見るなんてありえないもんね!作った本人すら見る機会が無い場所にこだわる必要はないと思う。
レール取付
施工説明書は意外にしっかりしているものの、日本語が怪しいし作業で引っかかるところも多くあるので詳しく解説しよう。僕の買った製品に限った話かもしれないけど、違う製品を買う予定の人でも参考にはなると思う。
壁面マーキング~穴開け
細かく寸法が書かれているが、この時点では赤丸内の寸法だけ気にしてればオッケー。一番左側のビス止め位置を鉛筆などでマーキングしておこう。どうせ穴を開ける位置なので鉛筆などでガッツリ書いて問題ない。
右側開口の場合は、D寸法は開口右端から120㎜になり、マーキング位置は②の右側の穴からスタートとなるので気を付けよう。
穴あけ位置以外のマーキングは、残したままにするとレールを付けた後に消しづらいのでこちらも覚えておこう。直接壁に書くのが嫌な場合はマスキングテープでも問題ない。
ドアを作ろうとしている人なら電動(インパクト)ドライバーは持っていると思うが、水平器とΦ9ドリルビットは持っていないかもしれないので必要な道具をまとめて紹介しておこう。
作業に必要な工具
まずは水平器だが、本体にある程度の長さがあった方が使いやすいし水平も取りやすい。だが、大型のものは高価になるのがネックである。今後出番があるか分からないような人だと手を出しにくいと思う。
そこでおススメなのがこいつ。230㎜という中型クラスのサイズでありながら、400円程度で買えちゃう。しかも工具メーカーで有名な高儀製なので安心できる。100均の精度不明の小型水平器買うぐらいならこっちの方が満足度が高いと思う。
続いてΦ9ビットだが、当然木工用の物を選ぶ。後ほどΦ10とΦ6のビットも必要になるので、この2種類が揃う安価なセット品を紹介しておこう。
ここで注意したいのが、チャックの形状によっては丸軸ビットが装着できない点である。
キーレスチャック式ならば特に気にする必要はないが、大手メーカーのインパクトドライバーは6.35㎜の六角軸しか装着できないので注意。とりあえずチャック形状に関わらず、六角軸ドリルビットのセット品を買っておけば間違いない。
「インパクトと丸軸ドリルビットなら持ってるんだけど…」みたいな方は、↓のような後付けキーレスチャックで対応できる。
もし電動ドライバーも持っていない場合は、とりあえず安価な充電式インパクトドライバーを準備する事をおススメする。大抵の工具は有線式でも不便に感じることはないが、ドライバーは狭所や高所含めてあらゆる場所で使う機会が多いので充電式がベスト。
これだと安価ながらも予備バッテリー付きなので充電切れで作業中断するなんて事もない。高価格品に比べてトルクで劣るが、ぶっちゃけ素人のDIYならパワー不足になることは無いと思う。
後ほどM8とM10のスパナも必要だが、個人的には安い物でもいいのでラチェットレンチをおススメする。(理由は後述)
オールプラグ(アンカー)を打ち込む
穴を開けた後に付属のプラグを打ち込むが、施工説明書には書かれていない部分。ここで注意したいのが中空になっている場合だ。
オールプラグは付属しているのだが、正直貧弱そうで不安。そもそも石膏ボードのみの中空壁に使って良いのかも分からない…。(プラグ仕様も説明書に記載なし)
そこで、木材下地の無い箇所にはフィッシャーのDuoPowerというプラグを使用した。
こちらは石膏ボード壁への対応を明言しているし、写真のようにプラグ自体が引き寄せられるので強度も期待できる。もちろん付属ネジとの相性も問題ない。ただしこの製品を使用する場合は下穴が8㎜になる点だけは注意して欲しい。
我が家はカップボードを吊るのにも使ってるよ
使い方は付属のオールプラグ同様下穴に刺しこみ、軽くハンマーで叩いて壁とツライチにしておけばOK。
レール&ドア取り付け
ここは説明書の日本語がおかしいが、建具が干渉せずにドアの厚さが45㎜以下ならワッシャー抜いても大丈夫ってだけである。
90㎜ネジを留める位置がレールの継ぎ目になり、ジグソーパズルみたいに組む形になっている。最初はちょっと不安に思えるが、めちゃくちゃガッチリ固定できるので安心していい。
先程の写真でも分かるようにレールのネジ頭が薄いので、何も考えずにスパナやレンチで締めるとレールに当たって一部塗装が削れちゃう。ソケット付きのラチェットレンチならばレールに接することなく楽に締め付けられるのでおススメ。
ドアは施工説明書通りの位置に穴を開ければいい。左右はズレても問題ないが、上下位置は必ず指示寸法通りに加工しよう。
ここの穴はΦ10になるので、先ほど紹介したドリルビットで対応できる。こちらの袋ナットの締め付け時もやはりラチェットレンチが安心。
ローラーをドアに取り付けたら一度レールに乗せて開閉に問題が無いか試してみよう。この時点でちょっと感動ものだと思う。
外れ止め取り付け
僕だけかもしれないが、どっち側から12.7㎜か全く分からなかった。これ説明の図が良くないよね…?
ドアの厚みに左右されない必要があるので、手前側から12.7㎜で間違いないだろう。
まぁ逆につけたとしても、見えない位置のビス止めなのでいくらでもやり直せると思う。
↑のようになるので、ローラーのボルトを留める位置が高すぎると外れ止めの効果が出ない。
下部ガイド(振れ止め)設置~ドア本体溝加工
バーンドアは上部だけ固定した宙吊り状態になるため、下部が前後に振れやすい。そこでドア本体の下部に溝を掘って、溝の間に下部ガイドが入り込むように設置する。
まずは溝掘り加工。僕はトリマーでやって幅広になってしまい、少し振れが出ることになった。気にならないレベルではあるけど。
ここは直線状の木材(ガイド)を沿えて手ノコで加工した方が良かったと思う。幅が狭いし、そんなに加工時間はかからないんじゃないかな?
続いて振れ止めの設置。
何も考えずに施工説明書どおりに加工すればOK。溝の加工さえ指定通りにできていれば、通常時にガイドが当たることは無い。強い負荷がかかるわけでもないので、床下地も気にしないでいいだろう。
僕は今後床にフロアタイルを上張りする予定なので薄板を噛ませているが、通常は不要。
ハンドルなどの取り付け
手前からしかアクセスしないため、引手とゲートラッチは今回使用していない。ドアハンドルは表からビス止めするだけなので、非常に簡単。
ハンドルの垂直がきちんと出せるようにレールの時と同様、水平器を使って取り付けよう。先ほど紹介した水平器であれば、ここでも問題なく使える。
完成
できる限り細かく説明したので、長くなってしまったが作業自体に難しいと感じたところは無かった。いろいろなドアを作ってきたが圧倒的に簡単だし、短時間でできるのは間違いない。
結論:一番簡単に作れるドア
ドア作りはそこそこ面倒な部類のDIYになるのだが、バーンドアなら裏面からのアクセスをしないのであればお手軽に作れてカッコいいので非常におススメ。
最後にバーンドアのメリットとデメリットを再度まとめておくので、ぜひとも検討してみてね!
壁面への加工が少なく、取り付け場所を選ばない
枠内に収める必要が無いので、ドアの自由度が高い
動作に関わる部分が少ないので、シビアな調整が不要
動きが軽くて音も静か
意外に低コスト
とにかく作るのが簡単
ドアと壁の間に隙間ができる
全開・全閉時に裏側のハンドルが隠れる
気密性が低い